【印刷方法の選択が成否を分ける】それぞれの強みを理解する

印刷物の品質や納期、コストに大きく影響するのが「どこに発注するか」という選択です。

印刷通販と専門印刷会社には、それぞれに明確な特徴があります。印刷通販は、標準化された印刷物を少部数・低コストで提供することに長けています。一方、専門印刷会社は多様な印刷技術と設備を駆使して、より高度なニーズに応えることができます。

「大量印刷」こそ専門印刷会社の真骨頂

印刷通販が少部数・小ロット印刷で優位性を発揮するのに対し、大量印刷では状況が逆転します。特に、オフセット輪転機を所有している専門印刷会社は、数万部を超える大量印刷において圧倒的なコスト優位性を持ちます。
これは、高速印刷が可能な輪転機の特性によるもので、稼働させればさせるほど1部あたりのコストが下がっていくのです。

例えば、新聞や雑誌、全国展開のキャンペーンチラシなど、数十万部単位の印刷物では、専門印刷会社に依頼した方が総コストを大幅に削減できる可能性が高くなります。印刷通販では一定部数を超えると単価の下落率が緩やかになりますが、輪転機印刷ではその後も効率的にコストダウンが可能です。

印刷物の「こだわり」を形にする技術力

印刷物の「こだわり」を形にする技術力 専門印刷会社の強みは、豊富な印刷設備と技術で、高度な要求に対応できる点です。
例えば以下のような場合は、印刷通販では対応が難しい場合が多いでしょう。

特殊な用紙や加工が必要なプロジェクト

高級感のある名刺や招待状、ブランドイメージを重視したパンフレットなど、独自性や高級感を演出したい印刷物では、特殊紙や特殊加工の活用が欠かせません。極厚紙や和紙、特殊コート紙などの特殊紙、特殊ニス引きといった高度な加工技術が必要なケースでは、専門印刷会社の出番です。

印刷通販では取り扱う用紙や加工オプションが限られていることが多く、対応していても割高になることがあります。一方、専門印刷会社は多様な用紙ストックと加工設備を持ち、特殊なニーズにも柔軟に対応。印刷担当者との綿密な打ち合わせを通じて、最適な紙質や加工方法を提案してもらえる点も大きなメリットです。

色へのこだわりが決め手となるとき

企業のブランドカラーや商品の正確な色再現が求められるケースでは、色管理の精度が重要になります。美術書や高級商品カタログ、ブランドのコーポレートツールなど、色の再現性がプロジェクトの成否を左右する印刷物では、専門印刷会社の高度なカラーマネジメントシステムが真価を発揮します。

専門印刷会社では、色校正の専門スタッフが厳密な色合わせを行い、本番印刷でも印刷技術者が常に色調を監視・調整します。これにより、最初から最後まで一貫した色再現が可能になるのです。印刷通販では標準的な色管理はされていますが、繊細な色調整や特別な色指定への対応は限定的なことが多いでしょう。

特殊なニーズに応える柔軟性

複雑なデザインや特殊な製本形態を実現

折り込みページのある冊子や特殊な断裁が必要なパンフレット、複雑な製本形態を持つ書籍など、標準的な印刷・製本の枠を超えるデザインを実現したい場合も、専門印刷会社の選択が適しています。

印刷通販ではテンプレート化された製本方法しか選べないことが多いのに対し、専門印刷会社では糸綴じ、無線綴じの変形、特殊な断裁など、デザイナーの意図を正確に形にする柔軟な対応が可能です。特に芸術書や写真集、ブランドカタログなど、製本方法自体が作品の一部となるような印刷物では、この違いが大きな差となります。

「急ぎ」に対応できる機動力

予定外の追加印刷や緊急の納品が必要になったとき、印刷通販では標準的な納期しか選べないことがあります。一方、自社で多様な印刷機を保有している専門印刷会社では、生産ラインの調整で急な依頼にも対応できる可能性が高くなります。

特に地域に密着した印刷会社は、クライアントとの距離が近いため迅速な対応が可能です。急な仕様変更や校正修正にも柔軟に対応できる点は、スケジュールがタイトなプロジェクトでは大きなアドバンテージとなります。

印刷の安心と信頼を支える要素

高い品質管理基準で一貫した印刷品質を維持

高品質を求める印刷物、特に企業の重要な広報物や高級商品のカタログなどでは、印刷のムラや色ブレが許されません。専門印刷会社では印刷技術者による細かな調整と監視が行われるため、一貫した高品質を維持できます。

また、専門印刷会社では印刷前の準備から印刷、製本、納品まで一貫した品質管理体制が整っていることが多く、各工程でのチェック体制も充実しています。これにより、最終的な印刷物の品質が保証されるのです。

機密性の高い印刷物も安心して依頼

社内用資料や未発表の商品情報、個人情報を含む印刷物など、機密性の高い印刷物では、セキュリティ管理が厳しい専門印刷会社に直接依頼する方が安心です。信頼関係のある印刷会社との直接のやり取りで、情報漏えいのリスクを最小限に抑えられます。

多くの専門印刷会社ではプライバシーマークやISO27001（情報セキュリティマネジメントシステム）の認証を取得しており、情報管理に関する厳格な社内ルールが整備されています。特に機密性の高い印刷物では、こうした認証の有無も選定基準の一つになるでしょう。

印刷＋αの価値を考える

専門家ならではのサポートとアドバイス

データ作成の段階からのアドバイスや、印刷後の発送代行まで、プロジェクト全体をサポートしてほしい場合は、専門印刷会社の対応力が役立ちます。印刷に関する知識や経験が豊富な担当者が、様々な疑問や相談に対応してくれるため、より満足度の高い印刷物を制作できるのです。

特に印刷の知識や経験が少ないクライアントにとって、「こうすればもっと良くなる」「この方法ならコストダウンできる」といったプロからの提案は非常に価値があります。印刷通販では基本的にオンライン上での限られたやり取りになるため、こうした細やかなサポートは期待しにくいでしょう。

マーケティングを強化する可変情報印刷

デジタル印刷機を持つ印刷会社は、一枚一枚異なる情報を印刷する可変情報印刷に対応できます。宛名印刷、ナンバリング、QRコード印刷など、マーケティングや販促活動に有効な印刷物を制作できる点も大きなメリットです。

例えば、顧客の購入履歴に基づいてパーソナライズされたDMやクーポンを作成したり、イベントの入場券に固有のQRコードを印刷したりといった高度なマーケティング施策も実現可能です。こうした付加価値の高い印刷サービスは、専門印刷会社ならではの強みと言えるでしょう。

長期的な信頼関係がもたらす価値

定期的に印刷物を発注する企業にとって、印刷会社との長期的な信頼関係は大きな資産になります。印刷会社側も継続的な取引先には優先的な対応や特別料金の設定など、さまざまな特典を提供することが多いです。

長期的な関係が構築されると、過去の印刷データの管理や、企業のブランドカラーの一貫した再現など、継続的なプロジェクトをスムーズに進行させるための基盤が整い、発注側の負担も軽減されます。こうした「目に見えない価値」も、専門印刷会社を選ぶ重要な理由の一つです。